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渦流探傷試験の測定原理

渦流探傷試験の特徴

渦流探傷試験は、金属表面のきずの検出能力に優れた試験方法です。

浸透探傷試験や磁粉探傷試験では必須の前処理や後処理工程が不要で、超音波探傷試験のように接触媒質(カプラント)を塗布する必要もありません。非接触での探傷も可能なため、手動での検査に加え、大量の部品を高速で検査するインラインでの自動検査にも広く使用されています。

また探傷だけでなく、異材判別や材質判別、熱処理判定、導電率や膜厚の測定にも適用できます。
このページでは、渦流探傷試験の特徴について詳しく説明します。

渦流のイメージ画像

測定対象物の材質

測定対象物材質のイメージ画像

渦流探傷試験では、検査対象物の中に微小電流を流し、その流れ方の変化を測定することにより、傷の有無や異材の判定、導電率の測定を行います。このため、検査対象は、金属一般や導電性樹脂等の電気が流れる材料(導電性)である必要があります。アクリルなどの樹脂、窓ガラス、建築用木材、コンクリート、紙、ナイロンなどの電気を流さない材料は、測定することができません。

測定対象・用途

渦流探傷試験では、渦流探傷器を用いて検査対象物内の微小な電流変化を測定する事により、その変化要因を探ります。以下は渦流探傷試験の主な測定対象・用途とその説明です。

測定対象・用途 説明
表面きず(割れ)の探傷 割れ(クラック)等の表面きずが存在すると、渦電流は表面きずを避けて生成されます。表面きずが存在する場合としない場合では、渦電流の形状が異なるため電気抵抗が変化します。この電気抵抗の違いを検知することで、傷の有無を判定することができます。
*電流は対象物の表面に近いほど多く流れるため、材料内部のきずの検出は困難です。
異材判別、材質判別、導電率測定 材料の中をを流れる電流量は材料の抵抗率に関係するため、電流量の違いを測定することで、異材を判別することができます。また、電流量そのものを測定することで、材料の材質判定や導電率を求めることができます。
膜厚測定 対象物とプローブとの距離により電流量が変化します。これを元に、膜厚を測定することができます。

測定対象物の形状

測定対象物形状のイメージ画像

対象物の形状は、プローブと呼ぶ渦流センサーと対象物との位置関係を一定とすることのできる単純形状のものに限ります。理由は、測定対象物が複雑な形状の場合、測定箇所によりプローブ内部のコイルと対象物の距離が変化してしまい、電流の流れ方が変化してしまうためです。

渦流探傷試験の長所・優位点

利点 説明
非接触での検査 プローブを測定箇所に密着させずに、非接触での検査も可能です。プローブと測定箇所との距離は一定に保つ必要があります。
測定個所を液体などで汚さない 浸透探傷試験の乳化液や浸透液のような液体を塗布する必要が無いため、測定個所を薬品や液剤で汚すことがなく検査が可能です。クリーンルーム内での検査にも対応します。
後処理が不要 渦流探傷試験は、微弱の電流を用いる検査のため、磁粉探傷試験の脱磁のような後処理が不要です。
高速測定 測定物を高速でスキャンして検査を行うことができます。1秒間に1m程度の速度でのリアルタイム検査も可能です。
自動検査・自動判定 非接触かつ高速での測定が可能なため、自動検査にも適しています。きず信号が明確であれば、自動判定も可能です。

渦流探傷試験のウィークポイント

欠点 説明
凹凸が有る面や複雑な形状の検査 プローブ周辺の形状により信号が変化してしまうため、凹凸が有る面や複雑な形状の検査は行えず、測定可能な位置が限定されることがあります。
内部(深部)の測定 プローブから距離のある材料内部(深部)は、測定できません。
打痕・押痕の測定 打痕や押痕などの緩やかな形状変化の測定は不得意です。
電気伝導度の変化の影響を受け易い 電気伝導度の変化がある場所の測定では、傷以外のノイズ信号が発生してしまいます。熱処理で回避できる場合もあります。
残留磁気の影響を受け易い 対象物に磁気を使用して電流を流すため、残留磁気がある性質の材料は電流が乱され、傷信号の判別が難しくなります。脱磁で回避できる場合もあります。
対象部とプローブとの位置関係 非接触にて検査を行う場合、対象部位とプローブとの位置関係に高い精度が要求される場合があります。このため、検査機構の設計にも精度が要求されます。