超音波厚さ計 測定事例

酸化スケールの厚さ測定

発電所のボイラーの過熱器管は、高温・高圧の環境で長時間使用されるため金属の内部構造が徐々に劣化し、適切にメンテナンスを実施しないと最終的には破断や破裂につながる恐れがあります。

ボイラー管破損の原因は複雑ですが、代表的なものの一つに高温水蒸気と鉄の反応による酸化があります。この反応によって、FeO・Fe3O4・Fe2O2などからなる酸化鉄層が形成され、その結果、管の内壁(蒸気側)や外壁(燃焼ガス側)に、硬いがもろい酸化スケールが発達します。 酸化スケールが厚くなると、炭化物の球状化、内外壁でのさらなる酸化、管の肉厚の減少といった現象が進み、ボイラー管や継手の寿命を縮める要因となります。

測定例:発電所のボイラー管

測定例:酸化スケール

ボイラー管内壁に生成・発達した酸化スケールの厚さは、精密検査用の超音波厚さ計を用いることで、非破壊で測定できます。超音波厚さ計は現場での使用に適したポータブル型の装置で、この用途に非常に有効です。

酸化スケールの厚さ測定結果に加え、管の肉厚や応力などのパラメータを組み合わせることで、ボイラー管の残存寿命を推定できます。これにより、計画的に管を交換でき、劣化による破裂事故を防止できます。

超音波がある媒体から別の媒体に移動すると、一部の超音波は2つの媒体の境界面で反射します。 酸化スケールの測定では、超音波の一部は鋼管と酸化スケールの境界で反射し、一部はそのまま酸化スケールに透過し、底面エコーとして戻ってきます。超音波厚さ計は、境界からのエコーと底面エコーを検出し、それらの時間差から酸化スケールの厚さを算出します。

超音波厚さ計「PM5」では、厚さ約0.2mm以上の酸化スケールの測定が可能です。縦波超音波(縦波垂直探触子)を使用し酸化スケールを測定する場合は音速設定を約5,900m/sに、横波超音波(横波垂直探触子)を使用する場合は約3,300m/sに設定してください。

厚さ計 プローブ 周波数 種別 その他
PM5 GEN3 D15A6 15MHz 遅延材付き 縦波(5,900m/s)
M2091 20MHz 遅延材付き 横波(3,300m/s)

測定風景1

Aスキャン波形

測定風景2