ステンレスクラッド鋼の厚さ測定
ステンレスクラッド鋼は、耐食性・耐熱性に優れたステンレス鋼を、熱間・冷間圧延や爆発圧接などの接合技術により炭素鋼に一体化(クラッド化)した複合材料です。母材である炭素鋼が強度や構造的機能を、ステンレス層が耐食性・耐熱性・美観などの機能を担っています。
ステンレスクラッド鋼は、ステンレス鋼を単体で使用する場合に比べコスト面で有利で、さらに構造用鋼としての強度や加工性を活かしつつ、優れた耐食性能を持ちます。これらの特性から、化学プラント、石油精製装置、発電所、ボイラ設備など、高い耐久性と経済性が求められる分野で利用されています。

ステンレスクラッド鋼は優れた特性を備えていますが、これらの特性を十分に発揮するためには、被覆層(ステンレス)と母材(炭素鋼)の厚さが設計どおりであることが重要です。断面を切断して観察すればそれぞれの厚さを正確に測定できますが、この破壊が伴う方法は、供用中の配管等には適用できず、検査可能な箇所が限定されるという課題があります。
お客様より、ステンレスクラッド鋼の各層の厚さを超音波厚さ計で非破壊で測定できないか、という相談をいただきました。提供いただいたサンプルは、厚さ11.2mmの炭素鋼母材に、厚さ2.7mmのSUS304が爆発圧接法(爆着)により接合されたものです。
鋼材の厚さ測定で一般的に使用される、5MHzの二振動子探触子と腐食検査用の超音波厚さ計の組み合わせで測定したところ、1層目の厚さのみが表示される場合と、2層の合計厚さが表示される場合があり、測定結果が安定しませんでした。
これは、炭素鋼とSUS304の音響インピーダンスが近いため、両者の境界面(接合面)で反射するエコーが少なく、超音波の大部分が透過してしまうことが原因のようです。


次に、高周波の15MHzのディレイラインプローブと精密超音波厚さ計「PM5」の組み合わせで測定しました。プローブの周波数を高くすることで波長が短くなり、炭素鋼とステンレスの境界面で反射するエコーが増加します。これにより、安定して測定できるようになります。さらに「PM5 Gen3」のデュアルレイヤー(2層)測定オプションを使用すると、境界面と底面エコーの両方を同時に検出し、炭素鋼とステンレスの厚さを同時に測定できます。

精密超音波厚さ計「PM5」と15MHzのディレイラインプローブの組み合わせでの測定結果は良好で、高精度かつ再現性の高い測定ができました。オプションのデュアルレイヤー(2層測定)機能を使用すれば、2層の厚さを同時に測定できます。
クラッド材の厚さ測定についてご興味があれば、お気軽にお問い合わせください。
| 厚さ計 | プローブ | 周波数 | 種別 |
|---|---|---|---|
| PM5 GEN3 | D15A6 | 15MHz | 遅延材付き |
