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カシメ(クリンチング)の検査

カシメ(クリンチング)の検査

カシメ(クリンチング)とは、金属同士を塑性変形によって接合する手法のひとつです。金属板を重ね、局部的に圧力を加えて変形させることで、材料同士を噛み合わせて固定します。
接合対象は主に薄板に限られますが、溶接のように熱を用いないため熱影響による材質変化がなく、またねじやリベットといった追加部品も不要です。そのため、軽量化やコスト削減に優れた接合方法として、自動車のシートフレームやボディ構造部などの製造に採用されています。

ただし、接合時に金属板の薄くなった部分で割れ(クラック)が発生する場合があり、その確実な検出は製品の安全性を確保する上で極めて重要です。渦流探傷試験は、金属材料の表面および表面直下に発生する割れの検出に優れているため、カシメ部の検査にも適した手法と言えます。
このページでは、カシメ部の手動探傷について説明します。

カシメ(クリンチング)の検査

測定方法(カシメ専用 手動検査プローブ)

カシメ部の割れ検出は、汎用プローブでは再現性や信頼性の高い検査を行うことが困難です。カシメ形状に正確にフィットする突起を持ち、割れの発生しやすい位置に合わせてコイルを配置したカシメ専用プローブを用いて探傷する必要があります。
この専用プローブを使用することで、手動検査においてもノイズ(ガタ)を抑えつつ割れ部を確実にスキャンできるため、微細な割れの検出が可能となり、検査の再現性および信頼性が向上します。

計測器イメージ

カシメ専用プローブの画像
カシメ専用プローブ

渦流探傷器に探傷条件を設定します。以下の値は参考値です。使用する探傷器および材料に応じて調整してください。

周波数 ローパスフィルター ハイパスフィルター 画面 プローブ
2MHz 100Hz 2Hz 位相平面 カシメ用プローブ

プローブを割れのないカシメに押し当てます。プローブをしっかりと固定し「NULL(ゼロバランス)」ボタンを押します。

次に、割れのあるカシメ(NGサンプルなど)をスキャンします。プローブをカシメ部に密着させながら、手動で一定の速度で回転させます。割れからの信号を確認し、Y軸の振幅が最大となるように探傷器の位相角を調整します。このとき、きず信号の大きさはプローブの回転スピードの影響を受けるため、できるだけ一定の速度で回転させてください。(※ハイパスフィルターを設定しているため、スキャン速度によってきず信号の大きさが変化します。)
以降は、調整した条件のままカシメ部の検査を行ってください。

下の画像は、良品と2種類の欠陥品をそれぞれスキャンした時に表示された信号を示しています。目視可能な大きな割れはもちろん、目視できない小さな割れも検出できていることが分かります。 このように、カシメ専用プローブを使用することにより、初心者でも簡単に微細な割れを検出することができます。

弊社では、カシメ部の形状や材料に合わせて最適なプローブを設計しています。お気軽に技術スタッフまでお問い合わせください。

割れなし(良品)の画像

割れ大(目視容易)の画像

割れ小(目視不可)の画像