クラック・表面きずの検出

航空機のエンジン部品や自動車・鉄道車両の足回り、発電所のタービンブレードといった部品は、使用時に高温・高圧や高応力が掛かるため、疲労き裂が発生しやすくなります。また、部品の製造時に微細なきずがあると、使用に伴い急激に損傷が進行します。
渦流探傷器は、金属材料の表面および表面直下のクラック(割れ)や、目視検査では見落としやすい微細なきずの検出能力に優れているため、このような疲労き裂や製造時のきずの検査に広く使用されており、人命や社会インフラに関わる製品分野において品質保証と安全性の確保に不可欠となっています。
ここでは、微細なきずの検出に適した差動方式(ディファレンシャル)のプローブと、汎用性の高い単一方式(アブソリュート)のプローブを用いて、それぞれクラック(割れ)を検出する方法を説明します。
併せて、0.2mm、0.5mm、1mmの深さのきずが入った鉄板を用いて、クラックの深さと検出される信号の関係を説明します。
測定方法(差動方式プローブ)
差動方式(ディファレンシャル)は、プローブの検出面(接触面)に近接して配置した2つのコイルで信号を検出し、その応答の差によって探傷を行います。原理上、緩やかに変化する減肉等は検出しにくく、またプローブの走査(スキャン)方向に制約がある反面、単一方式よりもノイズ(ガタ)ときず信号の差(S/N比)が大きいという特長があり、微細なきずの検出に適しています。
渦流探傷器に、以下の値を参考にして、必要項目の設定を行います。
周波数 | ローパスフィルター | ハイパスフィルター | 感度 | 画面 | プローブ |
---|---|---|---|---|---|
500KHz | 100Hz | 0Hz | 40dB | 位相平面 | 差動方式 (ディファレンシャル) |
※上記値は代表的な値です。測定物の厚さ・材質等に応じて、調整してください。
プローブを鉄板の上に置きます。プローブをしっかりと固定し、「NULL」ボタンを押します。次に、プローブを鉄板の上で、軽く左右に動かし、リフトオフ線が座標の中心から左右に移動するように、位相角を調整します。
次に、プローブを鉄板の上でスライドさせ、きずをスキャンします。下の絵は、スキャンした時に表示された信号を示しています。
浅いクラックでは表示される信号も小さく、逆に深いクラックでは信号も大きくなっていることが分かります。このように、クラックの深さと信号の大きさには比例関係があり、信号の大きさから、ある程度のきずの大きさ(深さ)を推測することができます。
また、後述の単一方式プローブよりもノイズが小さく、深さ0.2mmのクラックでも、ノイズときず信号にある程度の差があることが分かります。探傷器の感度設定を上げることで、その差が大きくなり、より安定した検出が可能となります。
このように、差動方式のプローブは、きず信号がノイズに埋もれにくいため、微細なきずの検出に適しています。

測定方法(単一方式プローブ)
単一方式(アブソリュート)は、プローブの検出面(接触面)にコイルを1つ配置し、信号変化の絶対値を検出します。クラックや比較的大きなきずに加え、減肉や圧痕のような緩やかな形状変化も検出でき、さらに異材判別や材質判別にも使用できるという優れた汎用性があります。ただし、ノイズや温度変化の影響を受けやすく、探傷能力は差動方式に劣ります。
ここでは、上記の差動方式プローブと同等仕様のコイルを1つ配置した単一方式プローブの場合を想定して説明します。渦流探傷器に、以下の通り、差動方式プローブ使用時と同じ設定を行います。
周波数 | ローパスフィルター | ハイパスフィルター | 感度 | 画面 | プローブ |
---|---|---|---|---|---|
500KHz | 100Hz | 0Hz | 40dB | 位相平面 | 単一方式 (アブソリュート) |
※上記値は代表的な値です。測定物の厚さ・材質等に応じて、調整してください。
プローブを鉄板の上に置きます。プローブをしっかりと固定し、「NULL」ボタンを押します。次に、プローブを鉄板の上で軽く左右に動かし、リフトオフ線が座標の中心から左に移動するように、位相角を調整します。
次に、プローブを鉄板の上でスライドさせ、クラックをスキャンします。下の絵は、スキャンした時に表示された信号を示しています。
差動方式プローブと同様に、きずの深さと信号の大きさには比例関係があり、信号の大きさからきずの大きさ(深さ)を推測することができます。
ただし、単一方式のプローブは原理上、リフトオフ変動によるノイズ(ガタ)が発生しやすく、浅いクラックほどノイズときず信号の差(S/N比)が小さくなるため、微細なきずの検出には適していません。

微細なクラック・表面きずの検出
フィルターを設定することで、ノイズを減らし、より微細なクラックの検出が可能になります。
ここでは、単一方式(アブソリュート)のプローブを用いて、より微細なクラックを検出する方法とその注意点を説明します。
渦流探傷器に、以下の値を参照して、設定を行います。
周波数 | ローパスフィルター | ハイパスフィルター | 感度 | 画面 | プローブ |
---|---|---|---|---|---|
500KHz | 50Hz | 2Hz | 40dB | 位相平面 | 単一方式 (アブソリュート) |
※上記値は代表的な値です。測定物の厚さ・材質等に応じて、調整してください。
プローブを鉄板の上に置きます。プローブをしっかりと固定し、「NULL」ボタンを押します。次に、プローブを鉄板の上で、軽く左右に動かし、リフトオフ線が座標の中心から左に移動するように、位相角を調整します。
次に、プローブを鉄板の上でスライドさせ、きずをスキャンします。
以下の信号は、同じ大きさのきず(0.5mm)を、異なるスピードでスキャンしたときに表示されたものです。
プローブの移動するスピードにより、信号の大きさが異なっています。遅すぎたり、速すぎたりすると、きず信号が小さくなってしまいます。
このように、フィルターを設定することで、より微細なきずを検出することが可能になりますが、一方で信号の大きさがプローブの移動スピードの影響を受けます。このため、フィルター設定時は、プローブの移動スピードを一定にして検査を行う必要があります。また、適切な治具や機械送り等を併用することで、高精度の測定が行えます。
