先進の非破壊検査機販売のNDTアドヴァンス

渦流探傷試験の測定原理

対比試験片(基準試験片)

対比試験片(基準試験片)は、検査時の渦流探傷器の設定や、検査で得られた信号の評価に使用する、きず信号の基準となる仕様の明らかな人工きずが施された試験片です。渦流探傷器の定期点検や動作(故障)確認にも使用する、渦流探傷試験に必須の試験片です。
対比試験片の材料と形状は、検査対象と同一である必要があります。きずは、自然きずではなく放電加工やドリル、グラインダーによる人工きずを用います。ここでは対比試験片について詳しく説明します。

対比試験片の画像

対比試験片の材料と形状

対比試験片は、検査品と同一の材料かつ形状である必要があります。材料や形状が異なると、表示された信号が人工きずによるものなのか、材料や形状の違いによるものなのかを識別することができないからです。このため対比試験片の製作では、検査品の実物から欠陥のない良品を抽出し、それらにきずを加工し対比試験片とすることを推奨します。

材料・形状が異なると比較できない

バツの画像

対比試験片のイラスト画像
対比試験片

検査品のイラスト画像
検査品

材料・形状が同一である必要がある

マルの画像

対比試験片のイラスト画像
対比試験片

検査品のイラスト画像
検査品

きずの種類と加工

自然きずは仕様が明確でなく、またきずが徐々に進行する恐れもあるため、不合格の基準に用いるのは適切ではありません。他方で人工きずは、仕様が明らかなため品質管理における合格/不合格の定義を明確にすることができます。複数ラインで同一部品の検査を行う際には、同じ仕様の対比試験片が複数必要になりますが、このような場合でも、人工きずであれば容易に同じ仕様の対比試験片を複製することができます。このような理由から、特別の理由がない限り自然きずの使用は避け、人工きずを用います。

人工きずの加工にあたり、まず複数の不合格品(NG品)の実物を用いて、きずが発生する場所と、きずの大きさ・深さ等を調査します。きずの大きさや深さは、光学顕微鏡などを用いで実測します。これらの情報を元に、検出したい自然きずに近い形状の人工きずの仕様を決定します。検査の条件を明確にするため、製作する対比試験片の仕様は、必ず文書化します。

対比試験片に人工きずを加工します。ピンホール(孔食)はドリルやエンドミルを使用します。比較的広い範囲の腐食・減肉は、やすりやグラインダーによる研削や、薬品による腐食で加工します。応力疲労割れ等のクラック(スリット)は放電加工(EDM)を使用します。

自然きず

自然きずのイラスト画像
定義が曖昧で複製ができない

人工きず

ピンホール(孔食)
ピンホール(孔食)のイラスト画像
ドリルによる穴加工や
エンドミルによる平底穴加工

腐食・減肉
腐食・減肉のイラスト画像
グラインダーによる研削や
薬品による腐食

割れ(クラック)
割れ(クラック)のイラスト画像
放電加工(EDM)による
スリット(切込み)

その他

日常の点検や調整で対比試験片を使用していると、摩耗や予期しない傷が発生してしまうことがあります。このため対比試験片は、同一仕様で複数個用意しておくことが望ましく、さらに型番(製造番号)をマーキングするなどし、それぞれを識別できるようにしておきます。
対比試験片は品質検査における基準となる試験片であるため、保管時は、保護用のケースに入れたうえで、適切な温湿度で管理された部屋に収納し、傷・変型・汚れ・腐食の防止に努める必要があります。

試験片のイラスト画像