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渦流探傷試験の測定原理

きず信号の評価

渦流探傷試験によって得られるきず信号は、きずの深さと相関があります。割れの深いきずは大きな信号を表示し、割れの浅いきずは小さなきず信号を表示します。ただし、渦流探傷器に表示される信号の大きさは絶対的なものではありません。プローブの種類やプローブと試験体の距離、探傷器に設定している感度や周波数によっても変わります。きずを定量的に評価するためには、人工的にきずを加工した対比試験片を用い、基準となる信号が得られるよう探傷器の感度やプローブ位置を調整した上で探傷を行う必要があります。
このページでは、きず信号の評価方法および対比試験片を用いての調整項目について説明します。

きず信号の評価の画像

割れの深さときず信号の関係

割れの深さときず信号の大きさ(高さ)には、下図のような相関関係があります。ただし、この関係は使用するプローブや探傷条件により変化します。試験の実施にあたり、基準となるきずを探傷しきず信号が規定の大きさになるよう探傷器を調整し、割れの深さときず信号の関係を把握します。
渦流探傷器の調整に使用する基準となる切込み(スリット)や穴加工がされた試験片を、対比試験片と呼びます。対比試験片は、測定物と同じ材質かつ形状のものを用います。きずの深さや大きさ管理するために、自然きずではなく人工的に加工したきずを用います。

割れの深さときず信号の高さ(例)

割れの深さときず信号の高さ(例)の画像

対比試験片(例)

対比試験片(例)の画像

対比試験の詳細については、こちらをご確認ください

きず信号の評価方法

きず信号の評価には、大きく2つの方法があります。
1つはきず信号の高さ情報を渦流探傷器から外部機器に出力し、外部の機器で割れの深さや大きさを判定する方法です。外部機器での設定は複雑になりますが、OK/NG判定に加え、より詳細な情報を得ることができます。
もう一つは、渦流探傷器でアラーム(閾値)領域を設定し、きず信号がアラーム領域に達するとアラーム音を発したり、NG信号を外部機器に出力することで、OK/NG判定を行う方法です。後者の方法では、渦流探傷器に標準的に搭載されているアラーム機能を使用するため、きずの有無を簡便に判定することができます。

アラーム設定の例

アラーム設定の例の画像1

アラームによるきず信号の評価例1

画面中央に合格範囲の枠を設定し、信号が枠から出るとNGとしてアラームを働かせる。

アラーム設定の例の画像2

アラームによるきず信号の評価例2

画面の任意の位置に不合格の範囲の枠を設定し、
信号が枠に入るとNGとしてアラームを働かせる。

渦流探傷器・検査機構の調整

きずを定量的に評価するためには、放電加工(EDM)による切込みや、ドリルによる穴加工が施された対比試験片を用い、基準となる信号が得られるよう探傷器の感度やプローブ位置を調整した上で探傷を行う必要があります。以下は試験を行うにあたり、調整が必要な設定項目とその説明です。

主な設定項目 説明
周波数 周波数は、渦電流の浸透深さや感度、ノイズに影響を及ぼします。
プローブの仕様周波数をベースに、渦流探傷器にいくつか周波数を設定し、その都度対比試験片で探傷を行い、最適な適切な信号を得られる周波数を決定します。
感度 対比試験片を用い、信号のS/N(信号雑音比)や評価のしやすさを元に決定します。画面から大きく外れた信号は、不正な結果をもたらすことがあるので注意が必要です。対比試験片のきず信号を一定の大きさとした感度を基準感度とし、実際の運用時は基準感度に±αの感度を設定します。
ハイパスフィルターをOFFとした時に、全ての信号を画面内に表示するように調整することが望ましいです。
位相 通常はインピーダンス平面の画面で、信号のノイズ成分を水平(H)となるよう位相を設定します。ノイズ成分が十分小さい場合は、きず信号が垂直(V)になるよう設定する場合もあります。
ギャップ プローブと検査対象物とのギャップ(間隔)は、感度とS/N(信号雑音比)に影響を与えます。ギャップは出来るだけ小さくし、検査中にギャップが変化しないようなプローブの固定構造とする必要があります。また、感度設定に余裕を持たせるために、検査品の偏芯などによる検査中のギャップ変化も極力抑える必要があります。
アラーム 対比試験片の信号の状態を見ながら、ノイズを避けきずの信号を確実にとらえるように、アラームの位置と大きさを決めます。
フィルター 機械的な偏芯などによる再現性のあるノイズに対しては、ハイパスフィルターで取り除くことが可能です。ハイパスフィルターの設定によりきず信号も減衰してしまう恐れがあるため、初めは使用せずに対比試験片の信号をよく観察し、少しずつ調整していくことが望ましいです。
また、ハイパスフィルターの設定により、信号の形状など状況も変化するため、アラームや感度の見直しが必要になることがあります。
シーケンス 自動検査では、検査品を所定場所に設置してからプローブの位置決めを行い、検査を開始します。事前に設定した基準(アラーム)を元に信号の判定を行い、検査終了後に判定に従い検査品を排出します。検査中である事は外部機器が判断し、検査中は探傷器のアラーム信号を監視します。